糖軍群雄の記

Interview #10

金平糖の華やぎ、
あんこの味わい、
砂糖は老舗を支える。

株式会社一久
取締役執行役員
円山店製造長
久木 尚大さん
(札幌市)

2009年、株式会社一久に入社。店舗責任者、製造長を務める。現場での製造を指揮しながら、店舗運営企画や新商品開発を手がけている。

我ら糖軍は頼もしき味方と、
麗しき懐刀「戦国銘菓」を得た!
北海道に根を張る百年企業が、
次の百年に向けて動き出しています。
これは、糖軍『久木 尚大』殿のお菓子の物語——

創業100周年を祝う
戦国銘菓「姫君のおきにいり」

私ども株式会社一久(いちきゅう)は、大正13(1924)年9月、「一久大福餅本店」として旭川平和通買物公園(当時は師団通)に創業しました。その後、屋号の変更を経て、平成8(1996)年に法人化、店名を「もち処一久大福堂」として現在に至ります。主力商品は、餅と大福、団子。地元のみなさんにごひいきにしていただき、おかげさまで、令和6(2024)年に100周年を迎えることができました。

それを記念して開発したのが、戦国銘菓「姫君のおきにいり」です。きっかけは、JAグループ北海道(北海道農業協同組合中央会)。砂糖のイメージアップと消費拡大のために立ち上げた「天下糖一プロジェクト」の一環として、北海道産の砂糖や食材をPRするためのスイーツをつくりたいと、弊社にお声がけくださったのです。創業以来、道産食材を厳選して餅菓子づくりに励んできたので、そこを評価いただけてうれしかったですね。

戦国の姫君らしさは
道産砂糖の金平糖

「姫君のおきにいり」は、カステララスクです。北海道産の砂糖、小麦粉、牛乳、別海町産バターを使用した「北海道加須底羅(カステラ)」を、キューブ型のラスクに仕上げました。しっとりと軽やかな口当たりで、ほのかに甘く、お客さまにご好評をいただいております。

弊社にはもう一つの「カステラ」があって、これをラスクにして「カステララスク」という商品名で売り出したことがあります。ただ、ネーミングもパッケージも地味すぎたのか、看板商品にまではなれませんでした。手前みそですが、味は申し分なく、社員にも好評でした。なので、いつか日の目を見るといいなあと思っていたのです。

そんな個人的な思いもあって、今回、天下糖一プロジェクトの商品開発にあたり、「天下糖一」→「天下統一」→「戦国時代」→「南蛮貿易」→「南蛮菓子」→「カステラ」と、連想ゲームのようにつながり、「カステララスク」にたどりつきました。商品名はいろいろなアイデアが出たのですが、「カステラって、武将よりも奥方や姫君が召し上がっている印象が強いよね」という女性社員たちの声から「姫君のおきにいり」に決定。姫君たちの着物から着想を得て、花柄をあしらった化粧箱をつくりました。

ただ、見た目の華やかさやかわいさにちょっと欠けているとも思っていて……。そこに出てきたのが、金平糖を入れるというアイデアです。金平糖とカステラは、同じ南蛮菓子として親和性が高く、これ以上ないくらいぴったり。しかも、原材料はグラニュ糖ですから、まさに天下糖一プロジェクトのスイーツにふさわしい。最終的に金平糖を入れて、「姫君のおきにいり」が完成しました。カステララスクは甘さを抑えているので、金平糖で甘みを調整しながら召し上がっていただくのも楽しいと思います。

餅屋の百年と菓子屋の一年
餅を生かす伝統のあんこ

弊社は餅屋としての歴史は100年になりました。でも、菓子屋としてはまだまだ新米です。餅は餅屋といいますが、餅屋が餅と餅菓子をつくりながら、和風の洋菓子をつくっています。きっかけはコロナ禍。不要不急の外出ができなくなってしまったので、ちょっと日持ちするお菓子をつくりたいと考えました。そうすれば、店舗に来られない日があっても、弊社の味を楽しんでいただけるかなと。

大福や団子などの餅菓子は、和菓子用語で朝生(あさなま)といい、賞味期限は1日間のみ、つくった日に食べきるものです。それこそ、砂糖をたくさん使えば、ある程度は日持ちします。ところが、ほどよい甘さにはなかなかなりません。一久の味を守るためにも朝生にこだわり続けています。

そこで、餅屋と菓子屋の二足のわらじをはく決断をしました。手探りのなかで開発したシマエナガをモチーフにした焼き菓子「ぽぬぐるシマエナガ」にも使用しているのが、あんこ。「一久さんのあんこがおいしい」と言ってくださる常連のお客さまが多く、まさに一久大福堂の味なのです。

餅菓子にとって、あんこは命。餅を生かすも殺すもあんこですから。原材料は、創業地のおとなり美瑛町産の小豆と、北海道産の砂糖。上白糖よりも水分量の少ないグラニュ糖を使用することで、調理釜での練り時間を短めに抑え、すっきりとした甘さに仕上げています。隠し味は塩。ちょっと加えると味にきれが出ます。塩の分量は調整していますが、長年ずっとレシピは変わっていません。

実は、天下糖一プロジェクトへの参画が決まる前、創業100周年記念菓子をつくろうと、社内コンペを開催しました。朝生部門と焼き菓子部門を合わせて50案ほど集まり、そのなかから誕生したのが「百小豆(ももあずき)」です。小豆をふんだんに使ったお饅頭で、生地に小豆の粉を練り込み、中にはあんこと大納言小豆のかのこ豆をぎっしりと詰め込みました。弊社の100年の集大成として、新たな一歩にふさわしい一品になったと自負しています。

お客さまを笑顔にしたいから
戦国銘菓とともに次の百年へ

次の百年に向けては、「姫君のおきにいり」から続く「戦国銘菓」のシリーズ化を目指しています。いま思い描いているのは、現在販売中の「小判」のような焼き菓子。これは、和風のフィナンシェで、2種類のうちプレーンにはこしあん、抹茶にはつぶあんが入っています。和菓子と洋菓子のそれぞれの良さを融合させたお菓子をつくり、「一久大福堂といえば、◯◯!」と思っていただける商品に育てていきたいですね。

今回、天下糖一プロジェクトを通して、やはり砂糖はなくてはならない食材だと実感しました。その最大の魅力は、人を喜ばせられること。甘いお菓子を食べると、ほっとしたり、うれしい気持ちになったり、リラックスできたりしますよね。確かに砂糖の摂りすぎはよくないけれど、本来は体に悪いものではありません。多くの方々が、お菓子を食べて笑顔になれるよう、私たちも糖軍として「天下糖一」に取り組みます。

株式会社 一久 札幌南郷8丁目店

会社情報 株式会社 一久

総合事務所|札幌市清田区清田1条3丁目7-32 清田スクエアビル/ TEL.011-888-1919

● 店舗・工場/旭川本店・工場、札幌円山店・工場、札幌月寒中央店・工場、札幌南郷8丁目店、札幌東区役所前店、札幌琴似店、清田ミニショップ&ドライブスルー
そのほか、百貨店・空港・道の駅にも店舗あり

● ホームページ/https://www.daifukudo.co.jp

※写真は札幌南郷8丁目店

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