糖軍群雄の記

Interview #6

スキンケアという方法で、
「白い砂糖」の
新たな道を切り拓く。

株式会社アビサル・ジャパン
代表取締役
幟立 眞理さん
(札幌市)

2004年、広島県呉市で株式会社アビサル・ジャパンを設立。2009年、本社を札幌市へ移転。北海道産てん菜糖を原料とするスキンケア商品の研究・開発を手がけ、セミナーや講演では砂糖の力を説く。

砂糖は食べるものですが、
昔から食べない使い方もありました。
砂糖を「スキンケア用品」に加工して、
美肌のために活動を続ける人がいます。
これは、糖軍『幟立 眞理』殿の開発の物語——

北海道産てん菜糖から生まれた
スキンケア用品「シュクレ」

私たちは、20年ほど前から白糖を素材としたスキンケア用品を開発、販売しています。一番はじめに作ったのが、シュガースクラブ「シュクレ」。フランス語で砂糖を意味する商品名にふさわしく、原料の80%が北海道産てん菜糖で、あとの20%はココナッツオイルや紅花油などの植物性オイルです。食品となる原料だけを使い、防腐剤や合成香料、着色料などは一切使用していません。2013年からは、「シュクレ」を真空パックにした「お砂糖革命®」をミャンマーやシンガポールでも販売しています。

そのほか、北海道産の野菜を原料とした基礎化粧品「シュクレモア」、天然精油の香りに安らぐ入浴剤「シュガーバス」、感染症対策や看護、介護にも役立つ洗浄・除菌ローション「カラダキレイ」など、いずれも北海道産てん菜糖が入っています。私にとって、お砂糖はスキンケアに欠かせない素材なのです。

愛娘のアトピーを治すために移住した、
ニューヨークでの「砂糖風呂」体験

私が「シュクレ」を開発したきっかけは、生まれたときからアトピー性皮膚炎に苦しんでいた娘たちです。アトピーに効果があるといわれる薬や食品は何でも試しましたが、症状は一向に良くなりません。そうこうするうち、思春期になった娘に「ママ、私の肌を見て。お嫁にいけるかな」と言われたのです。長年にわたりステロイド剤を塗ったために、娘の肌は黒ずみ、硬くなっていました。娘の悲痛な一言を聞いて、私はアメリカへの移住を決意します。アレルギー治療の先進国に行けば、娘たちのアトピーを治せるかもしれないと考えたのです。

そのとき、思いがけず、アメリカの大手化粧品原料メーカーからスカウトされました。商品プランナーとしての実績を買われ、マーケティングディレクターとして迎えたいとオファーをいただいたのです。化粧品は専門外でしたが、そこで働くなかで、娘の肌に良いものが見つけられるかもしれないという期待もあり、異分野へと飛び込みました。それが2000年頃のことです。

移住したニューヨークは、冬の寒さが厳しく、ひどく乾燥します。肌も乾燥してカサカサになってしまうため、保湿ケアは欠かせません。ある日、同僚の研究員が取り入れていた「バスタブに砂糖を入れて入浴する」という保湿対策を知ります。さっそく試してみたところ、乾燥した肌がしっとりとして、やわらかくなるのが実感できました。このとき、お砂糖の力で娘たちのアトピーを治せるかもしれないとひらめいたのです。

白糖はお肌の健康に良い!?
研究からわかった砂糖の力

私の生まれ育った広島県には、打撲に砂糖水で湿布する習慣があります。ほかの地域にも同じような民間療法があるようなので、日本では伝統的に、食べるだけではなく、傷を治すためにもお砂糖が使われてきたのでしょう。民間療法だからといって侮れません。じつは、白糖の力は科学的に証明されています。たとえば、医療や介護の現場でよく使われている褥瘡(床ずれ)の塗り薬「ポピドンヨード・シュガー」。これは殺菌作用のあるポピドンヨードで消毒し、創傷治癒作用のある白糖で皮膚を再生するものです。

この「細胞を再生する」という白糖の力に着目して、私は研究員たちと共にプロジェクトを立ち上げました。そして、試行錯誤の末に完成させたのが、非水性スクラブ剤(シュガースクラブ)です。これは、白糖1粒1粒を食用オイル(ココナッツオイル、ヘーゼルナッツ油、ブドウ種子油、ゴマ油、ヒマワリ油、紅花油、精油など)でコーティングしたもの。オイルがクッションとなるため、砂糖のザラザラした感触はなく、肌を傷つけません。もちろん、砂糖やオイルのべたつきもありません。この加工技術は世界初の特殊技術であり、2003年、アメリカで特許を取得しています

私たちが開発したシュガースクラブは、テストマーケティングでの反響が大きく、特にニューヨーク在住の日本人に高く評価していただきました。また、娘たちに使ってみると、3日ほどで痒みがなくなり、1週間ほどで皮膚の黒ずみが薄くなってくるという奇跡的なことも起きたのです。もしかするとアトピー性皮膚炎のほか、ニキビや敏感肌など肌トラブルを抱えている人たちの苦しみを和らげられるかもしれないと、手応えを感じました。でも、在籍していた化粧品原料メーカーは、化粧品の原料と処方(化粧品のレシピ)を販売するだけで、商品の製造はしていません。それならば自分で作るしかないと決意して、シュガースクラブづくりの権利を買い取り、2004年に帰国して、故郷の広島県で株式会社アビサル・ジャパンを設立、シュガースクラブの製造を開始します。

まず取りかかったのは、主原料となる白糖の選定です。アメリカでの研究では、遺伝子組み換えをしたカナダ産のてん菜を原料とした白糖を使用していました。その粒は粗く、日本人の肌には合わないと考えていたので、1年以上かけて200種類ほどの白糖を試したのです。最終的には、北海道産のてん菜からつくられるグラニュ糖に決めました。決め手は、遺伝子組み換えではないてん菜を使用していること、生産者がわかること、モニター試験の結果が一番良かったことです。シュガースクラブは、改良を重ね、「シュクレ」として結実しました。安全性試験や保湿効力試験、除菌試験などの機能試験のほか、病院や大学の協力を得て実施した臨床試験では、肌の皮脂と水分のバランスを保ち、バリア機能を向上させ、肌のきめを整え、やわらかくしっとりとさせるといったことが実証されています。2017年には、動物実験を行わないこと、動物由来の原料を使用していないことを証明する「Cruelty Free and Vegan認証」、通称PeTAマークを取得しました。私たちは、100%食品由来の素材を使用し、かつ環境や動物に配慮した商品開発を続けています。

肌トラブルのない社会を目指し、
砂糖のスキンケアを広める

娘の妊娠をきっかけに、ベビー&キッズ スキンケアシリーズを開発しました。それまでの研究によって、誕生直後から正しいスキンケアを続ければ、トラブル知らずの肌になると確信していたからです。孫には娘たちのような苦しみは味わわせまいと、寝る間も惜しんで開発に没頭し、生まれてから1カ月は毎日シュガースクラブでマッサージをしました。そのかいがあって、孫は乳児湿疹もアトピー性皮膚炎も出なかったです。

その後も兵庫県立病院NICU(新生児集中治療室)ほか、さまざまな医療機関との共同研究を重ねていくと、新生児期からスキンケアを行うと、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症リスクが抑えられることもわかってきました。そこで、これからは子どものスキンケアの普及活動に力を入れていきたいと考えています。まずは東京都港区で社団法人を立ち上げ、臨月の妊婦を対象とした子どものスキンケアセミナーを始めました。新生児からのお砂糖スキンケアを広め、肌トラブルのない社会にしていきたいです。お砂糖がいかに肌に良いかを伝えていくことで、お砂糖を敵視せずに受け入れてもらえるようになるだろうと期待しています。

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札幌市中央区南4条西12丁目1304-4 / TEL・FAX.011-530-6500

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